アシドーシスとアルカローシスの原因と仕組みをわかりやすく解説

アシドーシスとアルカローシス_アイキャッチ

酸・塩基平衡(バランス)の異常であるアシドーシスとアルカローシスの原因と仕組みをわかりやすく解説します。

アシドーシスとアルカローシスは、酸性とアルカリ性のバランスが崩れた状態をいい、

  • アシドーシス:血液が酸性に傾いた状態
  • アルカローシス:血液がアルカリ性に傾いた状態

です。

酸とアルカリのバランスが崩れる原因は、体内に酸性物質が増えすぎたり、アルカリ性物質が失われたりすることにより起こります。

そこで今回は、体内の酸性物質とアルカリ性物質の紹介、そしてこれらの物質が増減する疾患とその理由をまとめて紹介します。

血液のpHは7.40±0.05が正常

血液pH

私たちヒトの血液のpHは酸性物質とアルカリ性物質のバランスによって、pH7.40±0.05の範囲に調節されています。

体内の酸性物質一覧

体内の主な酸性物質には、

  • ケトン体
  • 乳酸
  • 水素イオン
  • 尿酸
  • 胃酸
  • 二酸化炭素

などがあります。

体内のアルカリ性物質一覧

体内のアルカリ性物質には、

  • 重炭酸イオン

があります。

ツカサ

厳密にいえば、重炭酸イオンはアルカリ性ではありません。ただ、体内ではpHをアルカリ性側に傾ける性質があるので、今回はアルカリ性物質として扱いたいと思います。

アシドーシス(酸性に傾いた状態)

アシドーシスとは、血液が酸性に傾いた状態をいいます。

血液が酸性に傾く要因は、『酸性物質の増加』と『アルカリ性物質の減少』の2つです。

酸性物質が増加する原因

アシドーシス_01

酸性物質が増加する主な原因は、

  • 絶食・飢餓
  • ビタミンB1欠乏
  • 1型糖尿病
  • 腎不全
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)

です。

絶食・飢餓:ケトン体の増加

絶食・飢餓では、脂肪酸分解の亢進によりケトン体が増加し、代謝性アシドーシスとなります。

絶食・飢餓とは、何も食べていない状態、エネルギーや栄養素を摂取できていない状態が続いていることを意味します。

私たちの体は絶食の状態が続き、糖質が不足すると、グルコースを起点としたエネルギー(ATP)産生ができなくなります

関連記事>>糖質の代謝経路である解糖系、クエン酸回路、電子伝達系をまとめて解説

脂肪酸のβ酸化

だからといって、ATPを作らないわけにはいかないので、体に貯蔵している脂肪(脂肪酸)を分解して、エネルギー(ATP)産生を行います。

ただし、脂肪酸を分解して、エネルギー(ATP)産生した場合、副産物としてケトン体が生成します。

関連記事>>ケトン体は絶食時に合成されエネルギー源として利用される

このケトン体が酸性であるため、絶食・飢餓が継続すると、ケトン体の蓄積によるアシドーシスが引き起こされるのです。

ビタミンB1欠乏:乳酸の増加

ビタミンB1欠乏では、嫌気的解糖の進行による乳酸の増加が起こり、代謝性アシドーシスとなります。

ビタミンB1と乳酸

ビタミンB1は、解糖系からクエン酸回路への橋渡しの役割をもつ、ピルビン酸脱水素酵素の補酵素として利用されています。

つまり、ビタミンB1が欠乏すると、解糖系からクエン酸回路への移行ができず、嫌気的解糖が進行することになります。

嫌気的解糖の最終生成物は、酸性物質である乳酸であるため、乳酸が増加することでアシドーシスとなります。

関連記事>>ビタミンB1の生理作用と欠乏症_糖質の代謝に関わるビタミン

1型糖尿病:ケトン体の増加

1型糖尿病では、脂肪酸分解の亢進によりケトン体が増加し、代謝性アシドーシスとなります。

仕組みとしては、先ほど紹介した『絶食・飢餓』と同じです。

1型糖尿病の場合、膵臓でインスリンが合成できないため、グルコースを細胞に取り込むことができません

インスリン
インスリンは、細胞へのグルコースの取り込みを促進する膵臓ホルモン

つまり、グルコースを起点としたエネルギー(ATP)産生ができないため、脂肪酸を分解してエネルギー源とします。

その結果、ケトン体の蓄積によるアシドーシスが引き起こされるのです。

腎不全:水素イオン(H+)の増加

腎不全

腎不全では、尿の生成障害により、水素イオンが増加し、代謝性アシドーシスとなります。

腎臓は尿を作り、排泄するための臓器です。

腎不全となると、腎臓の機能が失われ、尿の生成と排泄ができなくなります

尿の中には酸性物質である水素イオンや尿酸が含まれていますので、これらの排泄が障害され、血液中に蓄積することで、アシドーシスが起こります。

慢性閉塞性肺疾患(COPD):二酸化炭素の増加

COPD

慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、呼気量の減少により、二酸化炭素が蓄積し、呼吸性アシドーシスとなります。

喫煙が主な原因で発症するCOPDでは、息を吐き出すことができなくなります

私たちが吐き出す息には、酸性物質である二酸化炭素が含まれています。

つまり、COPDでは二酸化炭素が吐き出せなくなり、体内に蓄積することで、アシドーシスが引き起こされるのです。

アルカリ性物質(重炭酸イオン)が減少する原因

アシドーシス_02

アルカリ性物質(重炭酸イオン)が減少する主な原因は、

  • 激しい下痢

です。

激しい下痢:重炭酸イオン(HCO3-)の減少

激しい下痢では、腸液の喪失により、重炭酸イオンが減少し、代謝性アシドーシスとなります。

下痢になると、便の回数や量が増えます。

便のなかには、消化吸収されなかった食物(栄養素)だけでなく、腸管内に分泌された腸液なども含まれています。

腸液には、アルカリ性の重炭酸イオンも含まれているため、激しい下痢で腸液の喪失量が増えると、アルカリ性物質が失われ、相対的に酸性物質が増えるため、アシドーシスとなります。

アルカローシス(アルカリ性に傾いた状態)

アルカローシスとは、血液がアルカリ性に傾いた状態をいいます。

血液がアルカリ性に傾く要因は、『酸性物質の減少』と『アルカリ性物質の増加』の2つです。

酸性物質が減少する原因

アルカローシス

酸性物質が減少する主な原因は、

  • 激しい嘔吐
  • 原発性アルドステロン症
  • 過換気症候群(過呼吸)

です。

激しい嘔吐:胃酸(HCl)の減少

激しい嘔吐では、胃液の喪失により、塩酸(HCl)が減少し、代謝性アルカローシスとなります。

嘔吐をすると、胃の内容物とともに胃液が吐き出されます。

胃液には、酸性物質である塩酸(HCl)が含まれているため、頻回に嘔吐を繰り返すと、酸性物質が失われ、相対的にアルカリ性物質が増えるため、アルカローシスとなります。

原発性アルドステロン症:水素イオン(H+)の減少

原発性アルドステロン症では、水素イオン(H+)が減少し、代謝性アルカローシスとなります。

原発性アルドステロン症は、アルドステロンの分泌が過剰となる疾患です。

アルドステロン
アルドステロンは、カリウムの排泄とナトリウムの再吸収を促進する副腎皮質ホルモン

アルドステロンには、カリウムを尿中に排泄するという働きがあるのですが、カリウムの排泄と同時に酸性物質である水素イオンも尿中に捨てられてしまいます。

その結果、酸性物質が失われ、相対的にアルカリ性物質が増えるため、アルカローシスとなります。

過換気症候群(過呼吸):二酸化炭素の減少

過呼吸

過換気症候群(過呼吸)では、呼気量の増加により、二酸化炭素が失われ、呼吸性アルカローシスとなります。

過呼吸は、息を吐き出し過ぎている状態です。

つまり、酸性物質である二酸化炭素がドンドン体の外に出て行っている状態であるため、酸性物質が失われ、相対的にアルカリ性物質が増えるため、アルカローシスとなります。

ツカサ

ちなみに、過呼吸患者の口に紙袋をあてる理由は、吐き出した二酸化炭素を再度取り込み、血中の二酸化炭素濃度を回復させるためです。

アルカリ性物質(重炭酸イオン)が増加する原因

理論上は、アルカリ性物質が増加するとアルカローシスとなりますが、実際には、アルカリ性物質(重炭酸イオン)が体内で増加することはありません。

アシドーシスとアルカローシスの授業まとめ

以上、かなり長くなってしまいましたが、アシドーシスとアルカローシスのお話でした。

まず、酸性物質やアルカリ性物質には何があるのかを覚えてもらったうえで、

  • 酸性物質が増えるとアシドーシスになる
  • アルカリ性物質が減ってもアシドーシスになる
  • 酸性物質が減るとアルカローシスになる
  • 疾病によって酸性物質やアルカリ性物質の変動が起こる

この4点を理解しておいてくださいね。

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