管理栄養士国家試験のガイドライン(出題基準)が改定されます。
参考
平成30年度管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)改定検討会厚生労働省
このガイドラインは、
- 第34回管理栄養士国家試験(2020年3月実施予定)
- 第35回管理栄養士国家試験(2021年3月実施予定)
- 第36回管理栄養士国家試験(2022年3月実施予定)
- 第37回管理栄養士国家試験(2023年3月実施予定)
の4回分の国家試験を対象としたものになります。
ツカサ
目次
科目の配分(出題数)が変更!応用力試験が30問に
わかりやすい改定点として、各科目の出題数の配分が変わりました。
- 社会・環境と健康:16問(-1)
- 人体の構造と機能及び疾病の成り立ち:26問(-1)
- 食べ物と健康:25問(±0)
- 基礎栄養学:14問(±0)
- 応用栄養学:16問(±0)
- 栄養教育論:13問(-2)
- 臨床栄養学:26問(-2)
- 公衆栄養学:16問(-2)
- 給食経営管理論:18問(-2)
- 応用力試験:30問(+10)
※( )の数字は前ガイドラインからの増減を示す
の合計200問(1.~5.は午前科目、6.~10.は午後科目)となります。
応用力試験が30問に増えたことで、その他の科目の出題数が減っています。
ツカサ
各科目ごとの変更点まとめ
社会・環境と健康:16問
『社会・環境と健康』の主な変更点は、
- 公衆衛生・予防医学の歴史が削除
- 人口動態統計から婚姻と離婚が削除
- 疫学に利益相反が追加
- 母子保健に児童虐待防止が追加
- 産業保健にメンタルヘルス対策、過労死対策が追加
- 国際保健に持続可能な開発計画(SDGs)、ユニバーサル・ヘルス・カレッジ(UHC)が追加
です。
ツカサ
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち:26問
『人体の構造と機能及び疾病の成り立ち』の主な変更点は、
- 消化器疾患に腸閉塞(イレウス)が追加
- 呼吸器疾患に肺がんが追加
- 生殖器系に男性生殖器疾患、女性生殖器疾患が追加
- フレイルティ→フレイルに名称変更
- 核酸の項目が整理
- アミノ酸・たんぱく質の代謝の項目が整理
- 脂質の代謝の項目が整理
です。
ツカサ
食べ物と健康:25問
『食べ物と健康』の主な変更点は、
- 器具・容器包装に識別表示、識別マークが追加
- 「いわゆる健康食品」の表示が削除
- 項目や用語の整理
です。
ツカサ
基礎栄養学:14問
『基礎栄養学』の主な変更点は、
- 短半減期たんぱく質→急速代謝回転たんぱく質に名称変更
- 不可欠(必須)アミノ酸→不可欠アミノ酸に変更
- 脂質の臓器間輸送にケトン体を明記
です。
ツカサ
応用栄養学:16問
『応用栄養学』の主な変更点は、
- 高齢期に手段的日常生活動作(IADL)を追加
- フレイルティ→フレイルに名称変更
です。
ツカサ
栄養教育論:13問
『栄養教育論』の主な変更点は、
- 栄養教育の概念が削除
- 行動科学にヘルスリテラシーが追加
- 栄養カウンセリングに認知行動療法、動機付け面接が追加
- 行動変容技法にナッジが追加
- 食環境づくりが栄養教育論→公衆栄養学へ移動
です。
ツカサ
臨床栄養学:26問
『臨床栄養学』の主な変更点は、
- 循環器疾患に不整脈が追加(人体にもある)
- 妊産婦・授乳婦疾患に糖尿病合併妊娠が追加
- 神経性食欲不振症→神経性やせ症(神経性食欲不振症)に変更
- フレイルティ→フレイルに名称変更
です。
ツカサ
公衆栄養学:16問
『公衆栄養学』の主な変更点は、
- 管理栄養士・栄養士制度に職業倫理が追加
- 公衆栄養マネジメントに地域診断が追加
- 公衆栄養アセスメントに量的調査と質的調査の意義が追加
- 面接法、電話調査法→インタビュー法に変更
- 死因別死亡率、平均寿命、健康寿命、生活習慣病の有病率が社会・環境と健康へ移動
- 食環境整備が栄養教育論→公衆栄養学へ移動
です。
ツカサ
給食経営管理論:18問
『給食経営管理論』の主な変更点は、
- 給食の定義が削除
- 特定多数人への対応と個人対応が削除
- 食材→食材料に変更
- 食中毒・感染症が食べ物と健康に移動
- 項目の整理
です。
ツカサ
応用力試験:30問
『応用力試験』は、
- 個人または集団を対象とした栄養ケア・マネジメントの知識、思考・判断力
- 地域診断に基づく、栄養課題解決のための知識、思考・判断力
を問うことになりました。
ツカサ
これからの管理栄養士に求められる能力
実は、各科目の『出題のねらい』にも変更が加えられており、
- (旧)〇〇に関する基礎的知識を問う→(新)〇〇に関する知識を問う
となっています。
そして、ガイドライン改定の1頁の『Ⅱ.改定に当たっての基本的な考え方』に、以下のような文言があります。
管理栄養士の主な業務の一つとして傷病者に対する栄養の指導がある中、地域包括ケアシステムの構築・推進に向けて、個々人の生活の視点を踏まえたきめ細かな対応が今後より一層重要になると考えられる。また、医療・介護を始めとした様々な領域における栄養管理の質の向上が求められる一方で、働き手の減少が見込まれており、効果的・効率的なアプローチとして多職種連携がますます進むと推測される。こうした中、複雑困難な個別案件や地域の栄養課題に対し、栄養の専門職としてエビデンスやデータを基に、論理的思考により、最適解としての栄養管理をいかに打ち出していけるか、それを多職種連携の中で論理的に提案できるかといったことが一層問われてくるものと考えられる。
やはりこれからの管理栄養士には、
- 栄養に関する専門性の高い知識
- 病態・治療などについて、多(他)職種と議論できるレベルの知識
- データを分析する能力
- エビデンスを判断する能力
- 論理的思考をする能力
が求められるのだと思います。
国家試験は、単に合否を分けるためだけのものではなく、国が『管理栄養士に求めている知識・能力』を提示するためのものでもあると考えています。
なので、これから国家試験を受験する皆様は、『点を取るための勉強』だけでなく『何のための勉強なのか』ということも意識しながら勉強していただける。
そして管理栄養士の資格を取得済みの方々も、『これから社会に出てくる管理栄養士がどんな勉強をしているのか』を知っておくのも意義のあることだと思いますので、時間があれば、ガイドラインや実際の国家試験などを見てみることもおすすめしたいです。