ミネラル(多量ミネラル)であるナトリウムの生理作用について解説していきます。
ヒトは、ナトリウムの大部分を食塩から摂取しています。
「食塩を摂り過ぎると高血圧になるよ」
なんて言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
ではなぜ、食塩(ナトリウム)の摂取が血圧の上昇を引き起こすのでしょう。
今回は、摂取したナトリウムの吸収率や尿中への排泄量、そして血圧との関連について、わかりやすく解説していきます。
目次
ナトリウムは細胞外液に多い電解質(陽イオン)
私たちの体内に存在するナトリウムは、
- 50%:細胞外液(血漿・間質液)
- 40%:骨
- 10%:細胞内液
という分布になっています。
つまり、ナトリウムの大部分が細胞外液に存在するといえます。
細胞外液とは、細胞外の液体。具体的には血漿や間質液(細胞同士の隙間を埋める液体)を指す。
ツカサ
摂取したナトリウムの吸収率はほぼ100%
私たちが口にする食品の多くにナトリウムは含まれています。
ただ摂取するナトリウムの大部分は、食塩(NaCl)由来のものとなります。
では、摂取したナトリウムは、どの程度小腸で吸収されるのでしょうか?
その吸収率はほぼ100%。つまり、口に入れたナトリウムはすべて小腸で吸収されてしまうんですね。
摂取したナトリウムの大部分は尿中に排泄される
食事由来のナトリウムがほぼ吸収されると聞くと、
「体にナトリウムが増えすぎてしまうのでは?」
と思う人もいるかもしれません。
でも安心してください。
体にとって必要のないナトリウムは(腎臓が機能していれば)尿として排泄されていきます。
尿中ナトリウム排泄量から食塩摂取量を推定できる
摂取したナトリウムのうち95%以上(諸説あり)が尿中に排泄されます。
ということは『尿中のナトリウムは、ほぼすべて摂取した食塩由来のもの』と考えることができます。
この性質を利用して、尿中ナトリウム排泄量から食塩摂取量を推定することが可能です。
ツカサ
計算式
- 推定食塩摂取量(g/日)=24時間尿中Na排泄量(mEq/日)÷17mEq
※ナトリウム17mEq=食塩1g
計算例 24時間尿中Na排泄量が200mEqの場合の食塩摂取量(推定)は
- 200(mEq/日)÷17mEq≒11.8(g/日)
ナトリウムの習慣的な過剰摂取は血圧の上昇を招く
食塩を摂り過ぎる生活が続くと、細胞外液のナトリウム濃度が高い状態が継続します。
わかりやすくいえば『血液が濃い状態となる(=血漿浸透圧が高い)』ともいえます。
血液が濃いので、血液を薄める必要があるわけですが、そのときに水を使うんですね。
つまり、細胞外液の水分量を増やすことで、血液の濃度を正常に保とうとするんです。
その結果、循環血液量の増加が起こり、血管への圧力が増し、血圧が上昇するわけなんですね。
ナトリウムの授業まとめ
以上、ナトリウムのお話でした。
- ナトリウムは細胞外液の主要な陽イオン(Na+)
- 摂取したナトリウムは大部分が小腸から吸収される
- 吸収したナトリウムは大部分が尿として排泄される
- 尿中ナトリウム排泄量から食塩摂取量を推定可能
- ナトリウムの習慣的な摂取量が過剰になると血圧が上がる
この5点を覚えておいてくださいね。
<参考文献>
・基礎栄養学(改訂第5版),南江堂,2015.
・三訂 基礎栄養学(Nブックス),建帛社,2015.
・生化学(標準栄養学講座),金原出版株式会社,2002.