『血漿膠質(こうしつ)浸透圧が低下すると、浮腫が出現する』
臨床栄養の勉強をしていると、このような表現をよく目にしますよね。
「膠質浸透圧って何?」と思った方も多いのではないでしょうか。漢字も読み方も難しいですしね。
そこで今回は、膠質浸透圧と浮腫の発生機序について解説をしていきます。
膠質浸透圧とは、アルブミンによって作り出される浸透圧のことで、この膠質浸透圧によって、血管内に水分を留めておくことができるのです。
膠質浸透圧はアルブミンによる浸透圧
膠質浸透圧とは、アルブミンによって生じる浸透圧のことです。
膠質
膠質とは、コロイドのこと。微粒子が分散している状態。 アルブミン
アルブミンとは、血液中に存在するたんぱく質。血液中のたんぱく質のうち、50~60%程度はアルブミンが占める。 浸透圧
浸透圧とは、生体膜などの半透膜を介して水分が移動する力のこと。私たちの血管内には水分が多く存在していますが、これはアルブミンによって生じる膠質浸透圧の力で、水分を血管内に引きつけてくれているからなんですね。
アルブミンの低下は膠質浸透圧の低下を意味し浮腫が起こる
膠質浸透圧は、血液中のアルブミンによって維持されているので、何かしらの理由によりアルブミンが不足してしまった場合、血漿膠質浸透圧は低下します。
すると、血管内に水分を引きつけておくパワーが弱まり、血管内の水分が組織間液へ移動していってしまいます。
その結果、組織間液の水分量が増加し、浮腫(むくみ)が生じることになります。
これが『血漿膠質浸透圧の低下により浮腫が生じる』理由となります。
低栄養や肝硬変、ネフローゼ症候群で浮腫になる原因は膠質浸透圧
低栄養や肝硬変、ネフローゼ症候群の患者さんには、浮腫が出現することが多いです。
これらの疾患で浮腫が出現する理由は『血漿膠質浸透圧の低下』です。
- 低栄養:たんぱく質の摂取不足
- 肝硬変:肝臓でのアルブミン合成能低下
- ネフローゼ症候群:タンパク尿の増加
により、血液中のアルブミンが減少し、血漿膠質浸透圧が低下し、浮腫を発症するんですね。
ツカサ
ちなみに、腹部に浮腫が出現することを腹水といいます。腹水は、肝硬変で特に出現しやすいですね。
膠質浸透圧の授業まとめ
以上、膠質浸透圧のお話でした。
- 膠質浸透圧は、アルブミンによる浸透圧
- アルブミンには水分を引きつける力がある(=膠質浸透圧)
- 膠質浸透圧が低下すると、血管外に水分が出ていくため浮腫になる
- 低栄養、肝硬変、ネフローゼ症候群では膠質浸透圧が低下し、浮腫になる
この4点を理解しておいてくださいね。
<参考文献>
・人体の構造と機能及び疾病の成り立ち 総論(改訂第2版),南江堂,2013.
・人体の構造と機能及び疾病の成り立ち 各論(改訂第2版),南江堂,2013.