タマネギで涙が出る理由は硫化アリルと催涙成分合成酵素LFS

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タマネギ

タマネギを切ると涙が出る

そんな経験を誰しも1度はしたことがあるのではないでしょうか。

タマネギを切ると涙が出る理由には、硫化アリルアリイナーゼ、そして催涙成分合成酵素(Lachrymatory Factor Synthase;LFS)が関わっているのです。

涙の原因物質は硫化アリルだが

タマネギを切ると涙が出る理由は、タマネギに含まれる硫化アリル(ジアリルジスルフィド)という物質が原因であるといわれていました。

仕組みとしては、

STEP.1
硫化アリル
タマネギ含まれる硫化アリル
STEP.2
1-プロペニルスルフェン酸の生成
硫化アリルが酵素アリイナーゼにより、1-プロペニルスルフェン酸(中間体)に変化
STEP.3
催涙成分プロパンチアール-S-オキシドの生成
1-プロペニルスルフェン酸が、自然にプロパンチアール-S-オキシド(催涙成分)に変化

と考えられていました(過去形)。だから涙の原因は硫化アリルといわれてきたんです。

でもこの硫化アリルとアリイナーゼは、タマネギだけでなくニンニクなどのユリ科の植物にも含まれています。

じゃあニンニクをすりおろす時に涙が出るかというと…出ないですよね。

そうなんです。実はSTEP3の部分に間違いがあるのです。

酵素LFSの作用で催涙成分が生成する

タマネギの涙の仕組み

STEP3の催涙成分プロパンチアール-S-オキシドの生成の仕組みを解明したのはハウス食品さんです。


参考
タマネギ研究でのイグノーベル賞受賞についてハウス食品

この研究で、催涙成分の生成は自然発生ではなく、酵素LFS(Lachrymatory Factor Synthase)が関与することが明らかになったのです。

そしてこのLFSはタマネギに含まれる特有の酵素なのです。

ということで、もう一度催涙成分の正しい仕組みを書いておくと、

STEP.1
硫化アリル
タマネギ含まれる硫化アリル
STEP.2
1-プロペニルスルフェン酸の生成
硫化アリルが酵素アリイナーゼにより、1-プロペニルスルフェン酸(中間体)に変化
STEP.3
催涙成分プロパンチアール-S-オキシドの生成
1-プロペニルスルフェン酸が酵素LFSにより、プロパンチアール-S-オキシド(催涙成分)に変化

となります。

プロパンチアール-S-オキシド(催涙成分)の生成には、

  • 硫化アリル
  • 酵素アリイナーゼ
  • 酵素LFS

の3つの物質が必要であり、タマネギにはこれらの物質がすべて含まれているから、タマネギを切ると涙が出るという現象が引き起こされるわけです。

ニンニクには酵素LFSが含まれていないので、すりおろしても涙が出ないんですね。

涙の出ないタマネギ『スマイルボール』の開発に

ちなみに酵素LFSを発見したハウス食品さんはこの研究をきっかけに、涙が出ない、辛くないタマネギ『スマイルボール』を開発しています。


参考
スマイルボールができるまでハウス食品

基礎研究が人々の生活に役立つという理想的な発展を成し遂げております。

タマネギの授業まとめ

ということで、タマネギを切ると涙が出る理由は『タマネギに含まれる硫化アリル』は間違っていませんが正確ではありません。

正確には『タマネギに含まれる硫化アリルが、アリイナーゼとLFSによって成分変化するから』です。

常識と思われていたことが研究によって変化する。食品学・栄養学はそこがおもしろい所ですよね。