液体飲料の保存や携帯に便利なペットボトルは、本体がポリエチレンテレフタレート(PET)、キャップがポリプロピレン(PP)というプラスチックで作られています。
なぜ同じプラスチックで作らないのでしょうか。
実はこの2種類のプラスチックは、名前だけでなく性質も異なり、その性質の違いがペットボトルのリサイクル性の高さと密着性の高さにつながっているのです。
PETとPPの比重の差を利用したリサイクル術
ペットボトルは、本体がポリエチレンテレフタレート(以下、PET)、キャップがポリプロピレン(以下、PP)というプラスチックで作られています(2回目)。
実はこの2つのプラスチックは比重が異なります。
PETの比重は1より大きいため、水に沈みます。それに対しPPの比重は1より小さいため、水に浮きます。
この比重の違いをリサイクル工場で利用すると、
という非常に合理的な方法で、PETとPPを分別することができるのです。
ボトルキャップを分別する意味
ところで、
「砕くなら、街のゴミ箱とかでボトルキャップを分別する意味なくない?」
と思った合理主義者はいないでしょうか。
ダメです。分別してください。
理由は2つ。
- 容器内に液体が残っていると、清掃作業の邪魔になるため
- キャップにより密閉されているペットボトルを砕くと、破裂する恐れがあるため
です。
清掃作業員や機械の汚れ、破裂による事故を防ぐために、可能な限りの分別を行いましょう。
PETとPPの硬さの違いを利用した密着術
では、そもそも分別する必要を無くすために、本体とキャップを同じ材料にできないのでしょうか。
これにはできない理由があります。
PETとPPをの硬さを比べてみると、PETは硬質、PPは軟質という違いがあります。
仮にキャップにも本体にも硬いPETを使用すると、プラスチック同士が上手くかみ合わず密着性が低下し、内容物が漏れ出しやすくなってしまいます。
硬いPET同士をで密着させることは不可能ではありませんが、それには非常に大きな力が必要になるため、消費者がスムーズに開け閉めすることができなくなってしまいます。
また、軟らかいPPだけでペットボトルを作ると強度が低下し、破損が起こりやすくなってしまいます。
硬い本体と軟らかい蓋の組合わせによって、頑丈で液漏れが起こらない容器が実現しているわけですね。
素材の違いはリサイクルのしやすさだけでなく、消費者の使いやすさを考慮した結果といえるのです。
ペットボトルの授業まとめ
同じように見えるプラスチックでも性質の違いがあることがおわかりいただけたでしょうか。
今回の話をまとめておくと、
- ペットボトルの本体はPET、キャップはPP
- PETは水に沈む、PPは水に浮く
- PETは硬質、PPは軟質
となります。
これらの性質の違いを上手く利用したペットボトルは、化学と人の知恵を融合させた結晶といえますね。