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私たちの消化管に分泌される消化酵素のなかから、たんぱく質を分解する酵素をまとめていきたいと思います。
各消化酵素の名前だけでなく、『どこに分泌され、何を消化(分解)するのか』に注目して勉強しておきましょう。
別記事として解説した⇒糖質の消化酵素や⇒脂質の消化酵素と比べて、登場する酵素の数が多いのでしっかり整理できるようにしておきましょうね。
胃液に含まれるたんぱく質の消化酵素
胃液にはたんぱく質の消化酵素であるペプシン(不活性型はペプシノーゲン)が含まれています。
ペプシンの働き
胃液に含まれるペプシンは、胃に入ってきたたんぱく質を加水分解する酵素です。
ペプシンにより分解されたたんぱく質は少し小さくなり、ペプトンと呼ばれるアミノ酸が数十個つながった状態になります。
これで胃での消化活動は終了です。ペプトンは胃から十二指腸に流入し、膵液による消化を受けることになります。
補足:たんぱく質の消化酵素は不活性型で分泌される
ちなみに胃液に含まれるペプシンは、正確にいえば不活性型のペプシノーゲンの状態で分泌されます。
理由は簡単。胃をはじめとする私たちの臓器もたんぱく質でできているからです。
自分自身の臓器を消化(自己消化)しないようにするために、たんぱく質の消化酵素は食物を消化する時にだけ働くようなシステムになっているのです。
なので、ペプシンの生成からたんぱく質分解までの流れを正確に書くと、
となります。
膵液に含まれるたんぱく質の消化酵素
胃で生成されたペプトンは、十二指腸の管腔内で膵液による消化を受けることになります。
膵液に含まれるたんぱく質の消化酵素は、トリプシンとキモトリプシン、カルボキシペプチダーゼです。
トリプシンとキモトリプシンの働き
トリプシンとキモトリプシンは、ペプトンをさらに分解し、アミノ酸が複数個結合したペプチドにします。
補足:続:たんぱく質の消化酵素は不活性型で分泌される
ちなみに膵液に含まれるトリプシンとキモトリプシンは、正確にいえば不活性型のトリプシノーゲン、キモトリプシノーゲンの状態で分泌されます。
理由はペプシンと同じく、自己消化を防ぐためです。
ということで、ペプシンと同様に正確な流れを書くと、
となります。
カルボキシペプチダーゼの働き
カルボキシペプチダーゼは、たんぱく質またはペプチドのC末端(カルボキシル基)からアミノ酸を1つ切り離す酵素です。
カルボキシペプチダーゼも例に漏れず、最初は不活性型のプロカルボキシペプチダーゼとして分泌されます。
このプロカルボキシペプチダーゼは、前述のエンテロキナーゼやトリプシンの作用を受けて、活性型のカルボキシペプチダーゼに変化します。
小腸に存在するタンパク質の消化酵素
小腸の吸収細胞付近には、アミノペプチダーゼやジペプチダーゼが存在しています。
アミノペプチダーゼの働き
アミノペプチダーゼは、たんぱく質またはペプチドのN末端(アミノ基)からアミノ酸を1つ切り離す酵素です。
ジペプチダーゼの働き
ジペプチダーゼは、ジペプチド(アミノ酸が2つ結合)をアミノ酸×2に分解する酵素です。
アミノ酸、ジペプチド、トリペプチドとして吸収
こうして出来上がったアミノ酸、ジペプチド、トリペプチドが小腸から吸収されていくことになります。
たんぱく質は水溶性栄養素であるため、小腸上皮細胞で吸収後は、門脈を経由して肝臓へ運搬されます。
たんぱく質の消化酵素の授業まとめ
以上、たんぱく質の消化酵素のお話でした。
かなり多くの種類の酵素が出てきたので大変でしたね。
- たんぱく質の消化酵素は、胃、膵臓、小腸に存在する
- たんぱく質の消化酵素は、活性型と不活性型が存在する
- 具体的な消化酵素の名前と働き
- たんぱく質は、アミノ酸、ジペプチド、トリペプチドとして吸収される
この4点を復習しておいてくださいね。
<参考文献>
・基礎栄養学(改訂第5版),南江堂,2015.
・三訂 基礎栄養学(Nブックス),建帛社,2015.