この記事には広告を含む場合があります
脂溶性ビタミンであるビタミンAの生理作用と欠乏症・過剰症について解説していきます。
黄色やオレンジ色の野菜類に多く含まれているイメージがあるビタミンA。
しかし、野菜類に含まれているのはビタミンAの前駆体であるプロビタミンAなんです。
私たちヒトが生体内で主に使っているビタミンAは、レチノールと呼ばれる物質で動物性食品に多く含まれています。
そして、このビタミンAは暗順応に大きく関わっているのです。
ビタミンAの化学名はレチノール
ビタミンAには、A1系とA2系が存在します。
- A1系:レチノール、レチナール、レチノイン酸
- A2系:3-デヒドロレチノール、3-デヒドロレチナール、3-デヒドロレチノイン酸
ただ、一般的に『ビタミンA』というときは、レチノールのことを意味しています。
レチノールは動物性食品に多く含まれる
レチノールは、動物性食品に多く含まれているビタミンです。
具体的には動物(牛、豚、鶏等)の肝臓に多く含まれています。あとは、卵の卵黄にも多く含まれていますね。
ツカサ
植物性食品にはプロビタミンAが含まれる
ニンジンやカボチャなどの緑黄色野菜には、ビタミンAが多く含まれているイメージがあると思いますが、植物に含まれているのはビタミンAの前駆体であるプロビタミンAです。
前駆体とは、ある物質の前段階の物質。
プロビタミンAの代表的なものとしては、
- α-カロテン
- β-カロテン
- γ-カロテン
- β-クリプトキサンチン
があります。
プロビタミンAはあくまでも、前駆体。吸収率や生体での利用率はビタミンA(レチノール)には劣ります。
つまり、そのままビタミンA(レチノール)として、ヒトが利用できるわけではありません。
β-カロテンのビタミンA活性はレチノールの1/12
プロビタミンAのなかで、生体での利用率が最も高いのはβ-カロテンで、緑黄色野菜を中心とした食品中にも多く含まれています。
では食品から摂取したβ-カロテンは、どれくらいビタミンA(レチノール)として働いてくれるのでしょうか。
それは1/12です。
β-カロテンの消化管からの吸収率はレチノールの1/6、吸収後のレチノールへの変換率は1/2となっています。
つまり、
- β-カロテンのビタミンA活性=1/6 × 1/2=1/12
となるわけですね。
ビタミンAの生理作用:暗順応に関与するロドプシンの構成成分
私たちは暗闇でも、目が慣れてくれば、ある程度モノを視ることができます。これを暗順応といい、ビタミンAが大きく関わっています。
暗順応を起こすには、眼の網膜内でロドプシン(視紅)と呼ばれる物質を光によって分解する必要があります。
このロドプシンの構成成分としてビタミンA(レチナール)が使われているんです。
ビタミンAの欠乏症:夜盲症、乾燥症
前述した通り、ロドプシンがなければ、暗順応は起こりません。
ビタミンAが欠乏すると、もちろんロドプシンが作れませんから、暗所での視力を失うことになります。これを夜盲症といいます。
夜盲症がさらに進行すると、角膜の乾燥や潰瘍により失明することもあります。
ツカサ
ビタミンAの過剰症:頭痛、胎児奇形
ビタミンAを過剰に摂取すると、頭蓋内圧亢進による頭痛が起こることがあります。
また、妊娠期間中にビタミンAを過剰に摂取した場合は、お腹の中の胎児に奇形が生じることがあります。
ただ、普通の食生活をしていれば、この日本でビタミンAの過剰となることはありませんので、安心してください。
ツカサ
プロビタミンAの大量摂取で過剰症は起こらない
ちなみに、プロビタミンAであるカロテン類を大量に摂取しても、過剰症は起こりません。
その理由は、先ほど紹介したように“β-カロテンのビタミンA活性はレチノールの1/12”だからです。
β-カロテンを大量に食べたところで、実際にビタミンAとして使われるのは1/12なので、過剰症は起こらないということですね。
ツカサ
ビタミンAの授業まとめ
以上、ビタミンAのお話でした。
- レチノールは動物性食品に多く含まれる
- 植物性食品にはプロビタミンAが含まれる
- β-カロテンのビタミンA活性はレチノールの1/12
- ビタミンAは暗順応に関与する
- 欠乏症の代表は夜盲症
この5点を覚えておいてくださいね。
<参考文献>
・基礎栄養学(改訂第5版),南江堂,2015.
・三訂 基礎栄養学(Nブックス),建帛社,2015.
・生化学(標準栄養学講座),金原出版株式会社,2002.