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糖新生という化学反応を知っていますか?
糖新生とは血糖値を維持するシステムで、空腹時に起こっています。
私たちヒトの血液中にはグルコースが流れており、この血中グルコース濃度を血糖値と呼んでいます。
糖質を食べると血糖値が上がるわけですが、逆に糖質を食べなければ血糖値は低下します。
ヒトは血糖値が下がりすぎると低血糖となり、非常に危険な状態になります。
そこで私たちの体は低血糖を回避するために、細胞内でグルコースを作りだす『糖新生』を行い、空腹時の血糖値を維持・回復させているのです。
糖新生ができる臓器は肝臓
糖新生はすべての臓器でできるわけではありません。
糖新生を行うことができる臓器は肝臓や腎臓です(メインは肝臓)。ちなみに、筋肉は糖新生ができない臓器の代表です。
理由はグルコース-6-ホスファターゼという酵素の有無です。この記事(グリコーゲンの合成は食後、分解は空腹時に起こる)でも触れましたが、細胞内でグルコースを生成するには必ずグルコース-6-ホスファターゼが必要になります。
グルコース-6-ホスファターゼは肝臓には存在していますが、筋肉には存在しません。この違いが糖新生ができる臓器、できない臓器を分けているのです。
糖新生の原材料
糖新生を行うことでグルコースが生成するわけですが、糖新生の原材料はいったい何でしょうか?
答えは『糖質以外のもの』です。つまり、糖新生では糖質以外の物質からグルコースを作り出しているのです。
ただし、どんなものでも糖新生に利用できるわけではありませんので、『糖新生に利用できる基質』、『糖新生に利用できない基質』をまとめておきます。
糖新生に利用できる基質
糖新生に利用できる基質の代表は、
ピルビン酸
乳酸
糖原性アミノ酸
です。
関連記事>>糖原性アミノ酸とケト原性アミノ酸の種類と代謝経路
ちなみに、乳酸を原材料として糖新生を行う経路には『コリ回路』、糖原性アミノ酸であるアラニンを原材料として糖新生を行う経路には『グルコース・アラニン回路』という名称が付けられています。
補足:コリ回路とグルコース・アラニン回路
コリ回路の原材料である乳酸、グルコース・アラニン回路の原材料であるアラニン。この乳酸とアラニンは主に筋肉中に存在しています。
無酸素運動をすれば筋肉に乳酸が蓄積しますし、そもそも筋肉を構成するたんぱく質はアミノ酸の集合体です。
ただ、先ほども述べたように筋肉にはグルコース-6-ホスファターゼが無いため、筋肉中でコリ回路やグルコース・アラニン回路を完結させることができません。
そこで私たちの体は、筋肉で生成した乳酸やアラニンを(血液を介して)肝臓に移動させて糖新生を行うのです。これがコリ回路とグルコース・アラニン回路のシステムです。
糖新生に利用できない基質
糖新生に利用できない基質の代表は、
脂肪酸
アセチルCoA
ケト原性アミノ酸(リジンとロイシン)
です。特に脂肪酸が有名ですね。
糖新生の授業まとめ
以上、糖新生のお話でした。
- 糖新生は空腹時の血糖値維持システム
- 糖新生は肝臓で起こる
- 糖新生に利用できる基質と利用できない基質がある
この3点を理解しておいてくださいね。
<参考文献>
・基礎栄養学(改訂第5版),南江堂,2015.
・三訂 基礎栄養学(Nブックス),建帛社,2015.